認定制度の解説



 ICキャッシュカード認定制度運営協議会は、全国銀行協会(以下、全銀協という。)が制定する「全銀協ICキャッシュカード標準仕様」(以下、標準仕様という。)にもとづくICキャッシュカードの普及のために、ICカードおよび関連端末に関する認定制度の運営を目的として、平成13年10月19日に設立しました。



1.認定制度の必要性
ICキャッシュカードあるいは端末ベンダが、標準仕様にもとづいて製品を製造したとしても、それだけでは金融機関間の相互運用性が確保されたとは言えません。すなわち、異なるベンダ間の製品の相互運用性が確認されないまま、その製品が市場に提供されれば、不都合が生じる可能性も否定することはできません。
 全銀協の標準仕様は、基本的に金融取引用ICカードの国際的なデファクト・スタンダードであるEMV仕様(※)に準拠しています。EMV仕様においてもカード・端末ともに認定スキームが存在し、ICクレジットカードについては、各国際クレジットカードブランドが、また、端末については共通の認定機関であるEMVCo.がそれぞれ指定する試験機関において認定のための試験を実施しています。
 このように認定制度は、各ベンダの製造した製品が他のベンダの製造した製品と安定的に相互利用されるために、認定機関の定めた統一的な試験を修了し、認定が付与されることによって、その相互運用性を検証するスキームといえます。

EMV仕様とは、Europay International、MasterCard International、Visa Internationalの共同制定による金融取引用ICカード関連仕様です。





2.認定のスキーム
 私どもの認定制度においては、ICキャッシュカード認定制度運営協議会(以下、協議会)のほか、ベンダと、協議会が指定する試験機関が関係当事者となります。認定制度の基本的なスキームは次のとおりです。


認定の申請
認定を取得しようとするベンダは、認定の対象となる業務等を明らかにして、協議会に認定の申請を行います。申請を受けた協議会は、当該ベンダが協議会のメンバーであれば申請を受理します。
 認定申請の前提として、協議会メンバーであることを求めているのは、協議会が認定制度を利用するベンダ等による共同運営組織としているためです。(後掲「3.ICキャッシュカード認定制度運営協議会の運営」を参照)。
試験依頼
認定申請を受理した協議会は、指定試験機関に認定試験の実施を依頼します。
認定対象製品等の提供
ベンダは、指定試験機関との間で試験に係る契約(機密保持契約を含みます)を締結したうえで、認定を取得しようとする ICカードあるいは端末機器や関係マニュアル等を指定試験機関に提供するとともに、試験日程の調整、指定試験機関からの問い合わせ等に対応します。
 指定試験機関はベンダから提示された認定対象製品等について、協議会が制定する試験実施要領に従って試験を実施します。
試験結果通知
指定試験機関は、認定試験が修了した場合には、その結果を協議会に送付します(試験中断の場合等は、申請したベンダのみに送付されます)。なお、指定試験機関は、試験結果についてコメントは付しますが、認定付与の判断権限を有するものではありません。
認定結果通知
協議会は、指定試験機関から送付された試験結果に基づいて認定付与の判断を行い、「認定結果」としてベンダに通知します。認定結果が合格の場合は、併せて認定証を交付することになります。
 なお、認定した製品については、協議会において認定登録簿に登録し、その内容はホームページ上で公表され、金融機関など利用者への情報提供が行われます。




3.ICキャッシュカード認定制度運営協議会の運営
 認定制度における認定の付与の判断には、ICキャッシュカード等にかかる専門的・技術的な知識が不可欠となります。一方で、金融機関やベンダ間の信頼という観点から、認定機関の運営においては一定の中立性・独立性が重要な要素となります。
 協議会は認定制度を利用するベンダおよび認定試験の基礎となる標準仕様の制定者であり非ベンダである全国銀行協会の共同運営とすることにより、技術的な専門性を確保する一方で、運営の中立性・独立性を確保するように努めています。
 協議会の組織概要は次のとおりです。


①総会
 協議会の最高意思決定機関です。
②幹事会
 協議会の運営規約および総会の決議にもとづいて、協議会の通常業務を執行する機関であり、総会において選出される幹事会員および特別会員(全銀協)で構成します。
③基本問題委員会
 幹事会の諮問にもとづいて、運営規約の改正など組織運営に関する基本事項を審議する機関です。
④認定委員会
 幹事会の諮問にもとづき、認定に関する諸事項を審議する機関です。
⑤試験委員会
 幹事会の諮問にもとづき、認定のための試験に関する諸事項を審議する機関です。
⑥顧問
 協議会の運営規約では、総会の決議にもとづいてICキャッシュカードに関して学識経験を有する者若干名を顧問として招聘することができるとしておりますが、平成21年5月現在、顧問は置いておりません。




4.認定の対象
 本認定制度においては、ICカードと端末を認定の対象としています。
 ICカード認定については、ICキャッシュカードが標準仕様に定められた機能を正常に実施できるかどうかの確認を目的としています。また、端末認定については、標準仕様にもとづいて開発・発行されたICキャッシュカードに搭載のキャッシュカード業務等に関する機能を端末がそれぞれ正常に実施できるかの確認を目的としています。これにより、異なるベンダにより開発・製造されたICキャッシュカードと端末の間での相互運用性が確保されるようになると期待されるわけです。
 認定制度の対象として想定する端末には、①金融機関用ATM、②加盟店端末、③銀行窓口設置の管理端末があります。加盟店端末に関しては、現在、オンラインデビットカード業務、オフラインデビットカード業務それぞれについて関係者における具体的な端末仕様が検討・制定されているところであり、今後、その認定の仕組みについても定められる見込みです。また、銀行窓口設置の管理端末に関しては、必ずしも相互運用性が求められないことから、協議会における当面の認定対象は、金融機関用ATMのみとしています。




5.認定のための試験
 全銀協の定めた標準仕様は基本的にEMV仕様に準拠しています。そこで、認定のための試験の実施にあたってもEMV仕様における認定機関であるEMVCo.等の認定を取得している部分については、極力これを有効とすることにより、認定取得に係るベンダの負担を軽減するよう配慮しています。すなわち、認定対象の一定部分についてはEMVCo.等での認定が援用できることとしています。
 ICカード認定、端末認定別の認定の枠組みとEMVCo.との関係は次のとおりです。


〔ICカード認定〕
EMV仕様におけるICカードの認定は、現状、各国際クレジットカードブランドにおいて実施されていることから、EMVCo.といった統一された認定制度は存在せず、認定のための試験内容についても公表されていません。
 そのため、カードの伝送制御方式および電気的特性については、各国際クレジットブランドの認定を有効としつつ、アプリケーション部分については、EMV仕様をベースに、標準仕様にもとづいた協議会独自の試験項目を定めています。




〔端末認定〕
 端末の認定については、EMVCo.による統一的な認定制度があり、試験項目・内容とも整備され、公表されています。このため、協議会の認定のための試験においても、可能な限りEMVCo.の試験項目・内容を参照・援用しています。
 EMVCo.の端末認定は、試験の内容により、物理的・電気的・論理的仕様に対する試験(レベル1)とアプリケーションの機能を検証する試験(レベル2)に区分されています。
 本認定制度においては、基本的にEMVCo.における試験区分の考え方を踏襲していますが、①標準仕様固有のアプリケーションに関する部分、②金融機関用ATMの特性からEMVCo.レベル2の試験項目および試験内容では試験を実施できない部分の両者についてはレベル3と定義して、試験内容・手順を独自に定めています。
 したがって、各レベルの認定はそれぞれ別々に取得することができます。例えば、EMVCo.のレベル1およびレベル2の認定を取得していれば、標準仕様のための認定は、原則として残されたレベル3のみの取得で足りるということになります。


※グレードAとは、キャッシュカード業務およびローンカード業務のみ
 グレードBとは、グレードA+オフラインデビットカード業務(オンラインデビットカード業務はATMを利用しないため対象外)



〔依拠する全銀協ICキャッシュカード標準仕様書の版数について〕
全銀協ICキャッシュカード標準仕様(第4版)に依拠しています。
第4版は、ICキャッシュカードの基本形移行完了を踏まえて、第3版を改訂したものです。
なお、第3版から第4版への改訂により、カードおよびATMの試験仕様に追加・変更点はありません。
また、国内オフラインデビットカード業務に関する仕様が除外され、試験範囲からも除外されています。

「全銀協ICキャッシュカード標準仕様(第4版)」は、以下の全銀協ウェブサイトをご参照ください。
(http://www.zenginkyo.or.jp/abstract/efforts/action/action_03/ic.html)
※閲覧にあたっては、全銀協に開示申込書を提出し、ログインIDおよびパスワードの開示を受ける必要があります。


6.試験機関
 協議会が指定する試験機関は、平成30年10月現在、テュフズードジャパン株式会社の1社です。

以  上



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